基本情報
鎮座(所在地)
兵庫県宍粟市一宮町熊倉字馬場1286

大鳥居
創祀
第13代成務天皇 甲申(131年)二月十一日
社格等
延喜式:式内社(小社:庭田神社)
旧社格:村社
播磨国一宮 伊和神社 境外摂社
御祭神
主祭神
事代主命(ことしろぬしのみこと)
摂末社
両大神宮社
稲荷社
荒神社
祇園社
恵比寿社
五社五行神
縁起
古伝によると大国主命が天乃日槍命と国土経営を争い給いし時、伊和の地に於いて最後の交渉を終えられ、大事業達成に力を合わせられた諸神々を招集えて酒を醸し、山河の清庭の地を撰び、慰労のため饗宴を為し給えり。この地が即ち庭酒の里、現在の庭田神社奉祀の霊地なるにより、社殿を造営その御魂を鎮祭れりと云う。然るに当社安永縁起に成務天皇の御代に神託に依り、新たに神殿を建て、広く崇敬せらる。延喜式の制小社に列し、江戸時代寛文十一年社殿改造、元禄十五年本殿屋根替、元文三年拝殿屋根替、中略、明治四年本殿棟上再建、昭和四十三年五月幣殿改築、昭和四十九年十月拝殿改築、現在に至る。一、霊石 亀石 社殿右面にあり一、霊地 ぬくいの泉 社殿後方五十米『式内 庭田神社由緒記(境内掲示)』より※一部、読みやすいように句読点等を補い、旧漢字を修正しています。

境内由緒書
交通情報
公共交通機関
山陽新幹線姫路駅下車 山崎行きバスで山崎(終点)乗り換え 神姫バスで「三軒屋」バス停下車 徒歩35分(3.0km)
車
中国自動車道 山崎ICから車で20分程度
駐車場
大鳥居前に数台停車できるスペースあり
参拝記
ゲリラ豪雨の中で霧が霞む庭田神社
参拝は2019年8月末。伊和神社参拝の際に境外摂社である本社を参拝。伊和神社参拝直前までは超ゲリラ豪雨で車を走らせるのも怖いくらいだったが、濃霧の中雨は上がり、当社にも雨が上がったまま参拝が出来た。
鎮守の杜は、敷地内に小川が流れ、むしろ一雨がしっとりした良い雰囲気を醸し出す。
播磨国風土記に名前が出る宍粟の地
庭田神社は「延喜式」神名帳に小社として名前があり、「宍粟郡七座」の一つとされている。
播磨国一宮の伊和神社の境外摂社とされ、概ね3km程離れていて、車で5-10分程度の距離。
山と山の谷間を縫うように坂を上がっていくと本社に到達する。
周辺は農村地帯で、しかも霧に囲まれているので、まるで中国の水墨画を見るかのような雰囲気。
本社の前には少し広めの駐車場があり、車も駐車できる。
庭音の村。本の名は庭酒(にはき)なり。大神の御糧(みかれひ)、枯れて糆(かび)生えき。酒を醸(か)ましめて、庭酒(にはき)に献(たてまつり)りて宴(うたげ)しき、故、庭酒の村と曰ひき。今の人、庭音の村と云ふ。『現代語訳付き風土記 (上)常陸国・出雲国・播磨国』中村啓信 監修・訳注 角川ソフィア文庫
播磨国風土記 庭音村の条の記述、「大神の糒(ほしいい)にカビが生えた(つまり麴が生えた)ので酒を醸造して、神酒(みき)として大神に奉ったので「庭酒の村」といったが、今では庭音の村という」という話。
伊和の村。(本の名は、神酒(みわ)なり。)大神、酒を此の村に醸みたまひき。故(かれ)、神酒(みわ)の村と曰ひき。又、於和(おわ)の村と云ひき。大神、国作り訖(を)へたまひし以後(のち)、云ひたまひしく、「於和、等於我美岐」(注:本書注によれば難解な句で、『古典大系本』で「おわ、我がみきに等(まも)らむ」とされているとのこと)『現代語訳付き風土記 (上)常陸国・出雲国・播磨国』中村啓信 監修・訳注 角川ソフィア文庫
播磨国風土記 伊和村の条の記述では、大神がこの村で酒を醸造したので神酒(みき)の村という。一説によれば於和(おわ)村というが、それは大神が国作りを終えられ、「国作りは終わった。私の神酒と同じくらいよく出来た」という話。
上の風土記における大神は「伊和大神」のことだとされている。
それがなぜか伊和神社の伝説ではどこかでこの大神が「大己貴命」にいれかわっている節がある。

境内を流れる川
庭田神社の「ぬくゐ泉」
神社の小さな数段の階段を登り大鳥居を越えると、境内に小川が流れている。小川とはいえ結構な水量。日本酒の伝説が残る程であるから、きれいな水に恵まれた地であるのだろう。
本殿の裏参道から裏手に出ると「ぬくゐ泉顕彰記念碑」がたっていて、こちらが「ぬくゐ泉」である。
正直境内を流れる小川に比べて決して水量がある泉には見えない。
顕彰碑の近くに立つ「庭田神社のぬくゐ泉と造酒」という看板には上述のような播磨国風土記の該当部分が書かれていて、かつて庭田神社氏子には宵宮祭の当日早朝に家々で醸造した白酒を神前に供えて、五穀豊穣を祈る風習があったそうである。
平成25年には日本酒による乾杯の風習を広めるべく、「日本酒発祥の地宍粟市日本酒文化の普及の促進に関する条例」を制定したそうだ。

ぬくゐ泉について

ぬくゐ泉
日本酒の神といえば有名なのは大神神社
奈良県の大神神社は大和国一宮としても有名であり、しかも大物主神を主祭神として祀っている。
この大神神社で有名なのはなんと言っても「お酒の神様」である事で、多くの酒造メーカーの日本酒樽が境内に奉納されている。
この大物主神は大国主命=大己貴命の和魂(にぎみたま)とされているわけだが、伊和神社や庭田神社にも「伊和大神=大己貴命」とされていて、しかも日本酒の元祖をなのっているわけである。
日本酒はどちらが元祖かと追求するつもりは全くないが、カビが生えてそこから日本酒の醸造につなげる以上、カビ麴からお酒が出来るという知識は当時それなりにあったのだろう。少なくとも、お酒を造って国作りの完了を祝おう!といっているのだがら。
庭田神社の御祭神は「事代主神」、つまり大国主神=大己貴命の子。播磨国風土記のこのエリアの条には出てこない。恐らく本当に祀られているのはやはりこの地方の創世神である伊和大神ではないのか、そして、伊和大神のこの地方創世伝説と大己貴命の国土創世伝説が結びつき、結果として有名神の大己貴命と事代主神を祀ってはいるものの、この地方の英雄伝説こそが風土記に息づいているように思える。
そうした伝説にふさわしく、ゲリラ豪雨が去った後の谷間の中にしっとりと雨にそぼ濡れた庭田神社は決して大きくはないものの、なんとも趣深く、心に残る最高の風景であった。
御朱印

神社を包む山々
境内の社務所で頂戴できるようだが、当日は神職の方がご不在で頂戴できなかった。
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